11文字の殺人

著者: 東野圭吾
発行: 1990年

あとがきを読んで、東野圭吾宮部みゆきが同世代であることを知った。 仲が良いことは知っていたが、彼女は社会派ということもあり、世代が一つ上ぐらいのイメージがあった。

著者は85年のデビューから「放課後」でその年に江戸川乱歩賞をとっているものの 、出世作である「秘密」や「百夜行」、1999年と2000年の出版まで10年間以上鳴かず飛ばずの時代があった。

東野が、本格ミステリー作家と一線を画すところは、社会問題を題材にし、かつ人間ドラマを緻密かつ丁寧に描いているからだと思っている。

この作品は、まだ売れていなかった時代ということになるが、バブルの余韻が残る日本という舞台を使い、殺人ミステリーでありながら、人を殺すことの罪深さも描かれている。

ただ幾分か村上春樹の要素がはいっていたような気がするのは僕だけだろうか? もしかしたら彼は、殺人ミステリー小説作家版村上春樹なのかもしれない。

国の借金と民間の借金


サラリーマンとして働いていると、国の助成金をあてにしようとする場面を何度も遭遇する。

この30年間、税金を使うべきところをとことん削除し、本来民間が、頑張って欲しいところにお金を出してきたのではないかと思う。

特に企業債務は90年代の減少が凄まじく、2000年以降は、緩やかに減少していっている。

急増する中国の企業債務 | リコー経済社会研究所 | リコーグループ 企業・IR | リコー

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各国の非金融企業債務額のGDP

国の助成金には集中と選択という戦略がある。 これに民間まで乗っかってしまったら1億総壊滅ということになってしまわないか。

子供の貧困対策を寄付で賄うというどこの国の話なのかわからないようなことをするのではなく、とにもかく民間や個人ではどうしようもない公共サービスに税金を使ってほしい。

今日学んだこと

国債は2種類存在する

とくに「赤字国債」とは「特例国債」のことを言う。

国債の役割と課題を知っておこう | わかっておきたい投資のこと | man@bowまなぼう

民間債務(残高)

2種類存在する

  • 企業債務
  • 家計債務

※ 日本の民間債務残高の資料は、フリーでは見つけることが出来なかった。中国や韓国はよくあった。(とくにこの国ヤバい系のソース)

ザナドゥ

note.com

著者: 戸画美角

感想:

「僕は知っていることだけしか知らないですよ」

知り合いの方が小説を書くということが本当に面白い。ということが分かった。 著者はとても物知りな方だなとずっと思っていて、そのことを直接伝えたこともある。 そして冒頭の言葉。その時は、ちょっと失礼なことを言ってしまったと後悔した。

しかしあれからご本人は、大きな公演に登壇するだけでなく、本も書かれ、やはり物知りであるということを証明されている。

そして小説を書かれた。

タイトルが「ザナドゥ」 その意味が知りたくて読み始めた。読めば書いているだろうと。 でも中身を読んでもその意味は書かれていなかった。 仕方がないのでググったところ、昔のモンゴル帝国の都の名前であり、現代では桃源郷を意味するらしい。 そして二回目を読み、なるほどと、物語とつなげることが出来た。そして面白いと思った。

今、あとがきを読むと、物語へと昇華させている舞台裏が解説されていた。

「モノを抽象化し、そして具現化する」というテクニックを小説でもいかんなく発揮されていることがよく分かった。 (当時からそんなプログラミングコードを思いつくなと心から思わされていた。あるいはこの力があるからこそこうして小説におとしむことが出来るのかもしれない) 小説の技法も物語ごとに上手くなっていると感じた。

またお叱りを受けるかもしれないけど、ここに僕なりのささやかなエールを込めて「面白かった」と伝えたい。

アベノミクスに思う

連日、株価が下落している。 しかし株を持たない私にとっては関係のない話だ。 アベノミクスもそうだった。

アベノミクスは、年金と日銀砲とで日経平均関連銘柄を買い上げることによって、 投資家に円を供給し、その円が、他の投資に回ることで日本の景気を回復させるという目論見だった。

しかし結局は海外資産に逃げてしまい、円安をまねいてしまった。 2012年以降、アメリカへの直接投資が急上昇している。 2020年の対内直接投資残高、日本が首位維持(米国) | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ

輸出入総額の推移をみると、2014年以降輸出高が増えており、特にこの年初めて旅行収支が2000億円の黒字となった。(55年ぶり) 2019年には、インバウンドで2兆6千億円の貿易収支を叩き出す。

しかしそれ以上に輸入総額も上昇しており、2015年以降は貿易黒字と赤字を交互に繰り返している。 これは材料コストが増大していることが伺える。

結局投資家に円をばらまいても格差を増大させるだけで終わってしまったと言える。

占星術殺人事件

著者: 島田荘司 発行日: 1981年

あらすじ:

事件は1936年、ニ・ニ六事件が発生した日、資産家の画家が殺害されるところから始まる。 現場には日記が残されており、6人の娘を生贄にしてアゾートという女神を作り出す計画が書かれてあった。 後日、この記述通りに、娘たちも6体の遺体となって発見されることとなる。

感想:

40年前に書かれたこの小説が御手洗潔の初出となり、舞台は1980年となっている。 事件は44年前であるから、この頃は、まだ戦前は遠い過去ではないかもしれない。

金田一少年の事件簿に出てくるトリックと同一であったため、ここから拝借したのだろうか?

リラ荘殺人事件

著者: 鮎川哲也

1956-57年に雑誌で連載。 著者は、江戸川乱歩から本格派の驍将(ぎょうしょう、強い武将の意)と称されていた。

内容は、 戦後まもない芸術大学の学生達がリラ荘という館を舞台に殺人事件に巻き込まれていく本格ミステリー。

作中に剣持警部が出て来るが、金田一少年の剣持警部はここから名前が取られたのだろうか? ストーリーの展開に古臭さ(とくに警察官の無能っぷりと突然現れた気障な〇〇)を感じるものの、ミステリーは60年も前のものとは思えなかった。

隻眼の少女

単行本発売日: 2010年
著者: 麻耶 雄嵩 (まやゆたか)

まさかの結末。まさかの復讐劇。

キャッチコピーの「ここまで恐ろしいヒロイン」という意味を知りたくてディープに読みすすめてしまったせいか結末のショックがつらすぎた。

硝子の塔の殺人(知念実希人)を読んでいなければ、 しばし本格ミステリーは読む気すらしないほど、落ち込んでしまったかもしれない。

2011年 第64回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)と第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞した作品とのこと。